
元気に長生き 健康寿命を伸ばそう
元気に長生き 健康寿命を伸ばそう
ロコモとは、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)のことで、身体の運動器を長く使い続けるために(社)日本整形外科学会が提唱している新しい概念です。
人は骨や関節、脊髄、筋肉、神経などによって身体を支えたり、動いたりしています。
こうした器官を総称して運動器といいます。誰しも高齢になれば運動器の機能が低下していくものですが、現代のような高齢社会では、それが要介護などのリスクにつながる大きな要因となってしまいます。そこで、一人ひとりが日頃から自身の運動器の状態を認識し、チェックや早めの対策を行うことで長く健康な身体を維持できるよう発信されたキーワードがロコモなのです。
運動器に障害が起きる疾患が運動器疾患です。変形性膝関節症、変形性腰椎症、腰部脊柱管狭窄症、骨粗鬆症などがあげられます。そしてこれらの運動器の障害が要支援、要介護状態となる原因の第1位となっています。運動習慣のない生活や活動量の低下、無理なダイエット、肥満、スポーツのやり過ぎによる障害やケガなどが運動器疾患の原因となります。また、痛みを放置しておくことも活動量の低下につながり、悪循環となります。
自分のロコモ度をチェックしてみましょう。
以下の7つの項目のうち一つでも当てはまればロコモの心配があります。
ロコモの要因は、運動器の病気、力やバランスの能力の衰え、痛みなどさまざまです。これらの要因がつながったり、合わさったりすることでロコモになり、進行すると社会参加・生活活動が制限され、ついには要介護状態に至ってしまいます。ロコモと判定された場合、原因は何かを見極め、状態に合わせて適切に対処することが必要です。
対処法には病気の予防、病気に対する薬物や手術による治療、運動器の力の衰えに対する筋力やバランス力のトレーニング、痛みや痺れに対する治療、栄養不足や栄養過多の改善などがあります。また生活習慣病の予防やその治療を合わせて行うことも必要です。
ロコモは回復可能なのが最大の特徴。きちんと対処すれば、不安や不自由なく歩けるようになります。
ロコモにとって歩くことや立つことは中心となる運動です。では歩く能力や立ち上がる能力が衰えた時に整形外科ではどのようなことをチェックするのでしょうか?歩きにくさの原因を調べるために、ざっと思いつくだけでもこれだけのものを検討します。
つま先から順番にいきますと、足の指先の痛み、爪の痛みや変形、外反母趾、足の裏の痛み、踵の痛み、足関節の痛み、足の裏の違和感、足の裏のしびれ、足部の血行障害、足の指がうまく使えない、足首の硬さ、足首の不安定性(ぐらぐらする)、足首の靭帯損傷、足首の軟骨損傷などがあります。
続いて上に上がっていきますと、下腿(スネとふくらはぎ)の筋力低下、下腿(スネとふくらはぎ)のしびれ・痛み、膝の痛み、膝の曲げ伸ばしがやりにくい、O脚(おーきゃく)、膝の不安定性(ぐらぐらする)、膝の靭帯損傷、膝の軟骨変性、大腿(ふともも)の筋力低下、大腿(ふともも)のしびれ・痛み、などがあります。
さらに上にいきますと、股関節や臀部の痛み、股関節の硬さ、股関節の軟骨変性、足全体の長さが左右で異なる、骨盤の歪み、お尻周辺のしびれ・痛み、骨盤の関節の軟骨変性、腰の痛み、腰の骨の変形、側弯症、背骨の後弯、背中の筋肉の疲れや痛みなどがあります。
その他にも杖を使用される場合は手や肘や肩の使いにくさや痛みも歩行に影響するでしょう。また、どこか一つの筋肉をうまく使えないために歩きにくくなっていることもあります。例えば長腓骨筋(ふくらはぎ周囲の筋肉のひとつ)の機能不全は外反母趾や足部のアーチ低下を誘発して、歩行しにくさの原因となります。この場合ふくらはぎの筋肉の訓練が足部の症状の改善につながり、さらには歩行の改善につながる可能性があります。筋肉の訓練がなかなか進まない場合は、インソールや装具で矯正することでも症状の改善が期待できます。
運動器不安定症は、骨・関節・筋肉・神経など、身体の「動き」に関わる組織(=運動器)の機能が低下し、「転倒しやすい」「バランスを崩しやすい」「歩行時のふらつき」「痛みで歩けない」等の高齢化に伴う運動機能の低下による状態をいいます。「不安定」というとフラフラするというイメージで年齢のせいにしがちです。しかし、そのフラフラの原因として、かくれた関節の変形や痛み、神経の障害、脳の障害などがあり、それが徐々に悪くなっていくことがあるため注意が必要です。また、似たような症状でも血液の異常によるふらつきもありますので時には鑑別が必要となります。
上記のような症状がある場合は、放置せず早めに受診してください。
早期の気づきと対応が大切です。
運動器不安定症の原因は様々で、加齢による筋力低下(サルコペニア)が中心ですが、それ以外にも下記のような疾患や障害が関係していると言われています。
疾患 | 症状 |
---|---|
変形性膝関節症・変形性股関節症 | 関節の変形や痛みによる可動域制限 |
脊柱管狭窄症 | 神経の圧迫による足のしびれや歩行困難 |
骨粗鬆症 | 骨折しやすくなり、動くのをためらう |
サルコペニア | 加齢による筋肉量の減少 |
脳卒中・パーキンソン病などの神経疾患 | 運動の制御に障害が出る |
こうした要因が複合的に絡み合い、体を動かす力やバランス能力が低下していくのが運動器不安定症の特徴です。
鑑別すべき疾患として血液の異常や薬の副作用があります。脱力、筋力低下、疲れやすい、意識障害などの症状があります。貧血、低ナトリウム、高カルシウム血症、腎機能障害、肝性脳症など様々な原因疾患があります。これらも必要に応じて検査を行っていきます。また、血圧のお薬や睡眠薬でも同じような症状となることがあるため、心配な方は申し出ていただき、お薬を処方された医師に相談されてお薬の調整もご検討ください。
まずは医師による問診と診察を行い、運動機能を評価し判断していきます。
必要に応じて、エックス線検査やMRI検査を行い、骨や関節・神経の状態を画像で確認する場合がございます。
運動器リハや薬物療法が主に行われ、症状によって装具の使用や手術を行う場合がございます。まずは医師による問診と診察を行い、運動機能を評価し判断していきます。
早期に対策をすることで、運動機能の低下を防ぎ、生活の質(QOL)の向上が期待できます。気になる症状がある場合は、お気軽に当院へご相談くださいませ。
「運動器不安定症」は保険収載された疾患概念で、運動機能低下をきたす疾患(またはその既往)が存在すること、日常生活自立度判定がランクJまたはAであること、運動機能評価テストの項目を満たすこと、が条件となります。
一方、「ロコモ」はより広い概念で、運動器の障害により移動機能の低下した状態を言います。運動器障害は徐々に進行することから、自分で気付くことが重要です。
これまでの高齢者に関する研究や臨床経験から、例えば「階段を上るのに手すりが必要である、15分くらい続けて歩けない、片足立ちで靴下がはけない、横断歩道を青信号で渡りきれない、家のなかでつまずいたり滑ったりする」場合などが含まれます。
超高齢化社会が進む中、後期高齢者の病態としてフレイルやその原因であるサルコペニア(筋肉量が減少する病態)が注目されています。フレイルは「虚弱」「脆弱」などを意味する言葉で、足腰の筋力が低下し、疲れやすい、やる気が出ない、食欲がないなどの症状がみられる状態をいいます。要介護状態になる危険が高い状態であると同時に、適切な介入や支援を行うことで健康を維持して、自立した生活を送れる状態でもあります。つまりフレイルには、しかるべき介入をすれば再び健常な状態に戻るという可逆性が含まれており、フレイルから要介護状態へ進行しないよう予防し、フレイルから脱却することが介護予防にとって重要なことです。フレイル予防はバランスの良い食事と適度な運動が基本となります。
フレイルにより運動能力が低下して、それがロコモの診断基準にひっかっかるほど低下するとロコモと診断されます。つまりフレイルの予防や治療は、ロコモの予防にも繋がり健康に長生きすることにもつながります。
フレイルは予防と早期発見が鍵です。ロコモという言葉も世間にそこまで浸透していませんが、フレイルもご存じない方が多いかと思います。整形外科の第一の役割は、まずはフレイルとロコモを皆さんに知ってもらうこと、できればメタボという言葉ぐらいに世間に知られると良いと思います。続いて、フレイルに対する予防指導、身体の機能低下の原因を探して治療をすること、運動器リハの提案となります。
フレイルの主な原因は、加齢に伴う身体機能の衰えですが、身体的要素、精神的要素、社会的要素の3つがあります。
1.身体的要素
加齢に伴う身体機能の低下がフレイルの主な原因です。筋力の衰え、骨密度の減少、体力の低下などが進行すると、日常生活に支障をきたし体調が不安定になります。特に運動不足や栄養不足が身体的な衰えを促進し、フレイルを進行させることがあります。また、慢性的な疾患(糖尿病、心疾患、関節疾患など)や、治療を受けていない未治療の病気もフレイルを引き起こす要因となります。
2.精神的要素
抑うつ状態や認知機能の低下(認知症など)の進行によって意欲が低下したり人との交流が減少したりすることも、フレイルを悪化させると考えられます。
また、ストレスや不安が長期的に続くと、身体的な健康にも悪影響を及ぼし、フレイルを引き起こす原因となります。
3.社会的要素
「独居」や「閉じこもり」などの社会的なつながりが不足していることもフレイルを引き起こす要因の一つです。孤独になることで精神的にも悪影響があるだけでなく、運動不足や生活の質の低下にもつながります。
このように、フレイルは身体、精神、社会の3つの要素から影響を受けます。それぞれの原因に適切に対処することで、フレイルの予防や改善が可能になります。
フレイルは、専門的な診断により早期に発見することが重要です。フレイルの診断方法に関しては、統一の基準はまだありませんが主要な方法として「日本版CHS基準(J-CHS基準)」と基本チェックリストがあります。
項目 | 評価基準 |
---|---|
体重減少 | 6カ月で2kg以上の体重減少 |
筋肉低下 | 握力:男性<28kg 女性<18kg |
疲労感 | ここ2週間わけもなく疲れたような感じがする |
歩行速度の低下 | 通常歩行速度以下(性別・身長問わず毎秒1.0m未満) |
身体活動の低下 | 軽い運動、体操、および定期的な運動、スポーツをしていない |
フレイルは予防と早期発見が鍵です。少しの努力で健康を維持し、充実した生活を送ることができます。日常的な運動や筋力トレーニングや有酸素運動を取り入れることで、体力や筋力を維持できます。また、バランスの取れた食事を心掛け、特にたんぱく質やビタミンDを意識的に摂取することが大切です。さらに、友人や家族との交流を大切にし、孤立を防ぐことも重要です。定期的な健康チェックや、慢性的な疾患の管理を行うことで、フレイルの進行を防げます。
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