
足・足関節の痛み
足・足関節の痛み
こむら返りは、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋やヒラメ筋)、足部周辺の筋肉が痙攣し、強い痛みを伴う状態を指します。特に睡眠中や朝方の寝起きのタイミングで起こることが多く、急激な筋肉の収縮によって激痛が走るのが特徴です。脱水やミネラル不足、冷え、筋肉疲労、血行不良などが原因となります。また、高齢者や妊娠中の女性、運動不足の方などにもよく見られる現象です。
こむら返りは一過性の症状であることが多いため、発症時はまず筋肉をゆっくりと伸ばすストレッチが基本となります。ふくらはぎをやさしくマッサージし、温めることで血流改善を促します。頻繁に起こる場合は、電解質(マグネシウムやカルシウム、カリウム)の補正や、水分・ミネラル補給を意識することも重要です。漢方の68番、芍薬甘草湯が特効薬として有名です。大量に使用すると甘草の摂りすぎによる副作用が懸念されるので医師に相談するようにしてください。
外反母趾とは、足の親指(母趾:ぼし)の付け根が隣の指(第2趾:人差し指)側に屈曲し、母趾の関節が足の内側に突出した状態をいいます。レントゲンで骨の形を確認して、親指の骨が隣の指に向かって20度以上曲がっているものを外反母趾とすることが一般的です。靴との摩擦で突出した部分に腫れや強い痛みが生じるため、靴を履いた歩行に支障を来します。進行すると足裏の第2趾の付け根付近にタコができたり、母趾が第2趾や第3趾(中指)の下に潜り込んで、母趾の付け根の関節が半分脱臼した「亜脱臼」という状態になったりすることもあります。女性に多くみられる疾患です。
原因としてはハイヒールなどの先の細い靴やかかとの高い靴の影響が最も考えられます。関節リウマチの合併症で生じたり、加齢による筋力の低下などによって足のアーチ構造が崩れたりすることも原因になります。また、遺伝的な要因として、足の形や足指間の靭帯・筋肉の緩み(弱さ)による軟部組織のアンバランスなどが考えられます。
まずはレントゲンで骨の形を確認して、エコーなどでリウマチなどの炎症性疾患がないことを確認します。
治療には保存的治療と手術による根治治療がありますが、多くの場合、保存的治療が選択されます。保存的治療では、足先が細く、ヒールの高い靴を避け、関節の突出部分がこすれない幅広の靴を選ぶといった靴の指導、親指を支えている母趾外転筋という筋肉を鍛える体操や関節を柔らかくするストレッチなどを行います。また、外反母趾を矯正するための装具や足のアーチ構造を守るための足底板(インソール)などを用いることもあります。
保存的治療を行っても痛みが取れない場合や、変形が改善せず歩行障害を生じている場合には手術による根本的な治療が検討されます。一般的に行われる手術では、母趾のつけ根にある中足骨(ちゅうそつこつ)を切って関節の突出を矯正します。
足底腱膜炎とは、足の裏にある「足底腱膜」と呼ばれる組織に炎症が生じ、かかとや土踏まず付近に痛みを引き起こす疾患です。特に朝起きて最初の一歩を踏み出すときに強い痛みを感じるのが特徴で、歩き続けるうちに徐々に和らぐというパターンがよく見られます。長時間の立ち仕事、運動による繰り返しの負荷、扁平足や硬い靴底などが原因となり、足の構造や歩き方のクセも関係しています。慢性化すると痛みが長期にわたることがあり、日常生活に支障をきたすこともあります。
まずは安静とともに、足底に過剰な負担をかけない生活習慣の見直しが必要です。足指を動かす運動が重要で、運動器リハで治療を行います。インソールや足底パッドで足底腱膜をサポートし、歩行時の負荷を軽減させます。
アキレス腱は、足首の後面にある人体の中で最も太い腱で、ふくらはぎの筋肉とかかとの骨をつないでいます。アキレス腱断裂とは、その一部(部分断裂)またはすべて(完全断裂)が切れた状態のことです。30~40歳代が受傷の好発年齢ですが、10代から高齢者まで幅広い年齢で起こる可能性があります。テニス、野球、サッカー、バレーボールなどのスポーツ活動中に、踏み込み、ダッシュ、ジャンプ、ターンといった動作で、ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋:かたいさんとうきん)が急激に収縮して、アキレス腱に強力な牽引力がかかったり、着地動作などで急に筋肉が伸びたりしたときに断裂が起こります。階段を踏み外したときなど、スポーツ以外の日常動作でも起こることもあります。断裂は、腱の退行性変性(いわゆる老化現象)が基盤にあるとも考えられており、中高年のスポーツ愛好家に受傷が多いという特徴があります。若い頃にスポーツをしていて、しばらく、スポーツから離れて、30代ぐらいとなって運動を少し頑張りすぎた時などに起こります。
受傷時には、後ろから「蹴られた」「バットで殴られた」「ボールをぶつけられた」といった衝撃を感じることが多く、「破裂したような音がした」など断裂の音を自覚することもあります。受傷直後は痛みのため受傷肢に体重をかけることができず、転倒したり、しゃがみ込んだりしますが、少し時間がたつと痛みが強くない場合は歩行することができます。歩行が可能な場合でも、ふくらはぎの筋肉がうまく作用しないため、つま先立ちができなくなるのが特徴です。
アキレス腱断裂は、身体所見から比較的容易に診断することができます。アキレス腱部に皮下の陥凹(へこみ)や圧痛がみられます。また、うつ伏せの状態で膝を直角に曲げてふくらはぎを強くつまむと、正常の場合、足関節は足の裏の方向に折曲がりますが(底屈)、アキレス腱が断裂するとこの反応がみられなくなります。多くの場合、通常のX線(レントゲン)検査では異常を認めません。エコーでははっきりと断裂した腱と周囲の血腫を確認できます。断裂部分がふくらはぎ寄りなのか、踵の骨に近いのかも判断できます。いずれに偏っていても治療方法がむずかしくなることがあり事前にエコーで検査をしておくことが重要になります。
アキレス腱断裂の治療には、ギプスや装具を用いて治療する保存的治療と、断裂したアキレス腱を直接縫合する手術治療があります。
手術後のリハビリテーションも経験が必要であり、当院では年齢やスポーツ活動に応じて適切なリハビリテーションを計画して、提供してまいります。気軽にご相談ください。
捻挫とは、関節に外力がかかり靱帯や腱などの軟部組織や軟骨が損傷することをいいます。X線(レントゲン)検査で、骨折や脱臼などの異常が認められない関節の怪我の多くは、捻挫という診断になります。捻挫は全身のあらゆる関節部位で起こりますが、最も多くみられるのが足関節(足首)です。走っている最中の急な方向転換や転倒、交通事故や段差の昇降時の踏み外しなど、きっかけは様々です。主な症状は、患部の腫れと痛みで、靱帯の損傷が大きいほど強くなる傾向にあります。皮下や関節内に出血や熱感などを伴うこともあります。
典型的な足関節の捻挫は、足首を内側にひねることによって生じる足関節内反捻挫です。足関節の外側(外くるぶしの付近)にある前距腓靱帯(ぜんきょひじんたい)が、引き伸ばされたり、一部が切れたりすることで起こります。靭帯の損傷の程度には1度から3度までの分類があります。1度捻挫(軽症)は、靭帯が伸びたり、ごく一部が断裂したりする程度の損傷で、軽度の腫れと圧痛はありますが、不安定性(関節のぐらつき)はありません。2度捻挫(中等症)は、靭帯の断裂が不完全で関節の不安定性はありませんが、広い範囲の腫れと圧痛があります。3度捻挫(重症)は、靭帯が完全に断裂し、さらに強い腫れと圧痛があり、皮下出血や関節の不安定性がみられます。
まずはレントゲン検査で骨折を伴っていないか確認して、骨折があれば、治療法法が変わってきます。続いてエコーの検査を行い、レントゲンでわからないような小さな骨折がないか確認して、靭帯の損傷や内出血を確認します。エコーを用いることで適切な治療方針を決定することが可能となります。子どもの場合はレントゲンで映らない軟骨部分の損傷があることがあるため、エコーでの検査が特に重要となります。
受傷直後は、「RICE処置※」と呼ばれる応急処理を行います。この処置を行うことで腫れや損傷部位の拡大、内出血などを抑えることができます。足をついた時の痛みがある捻挫や重症の捻挫では1~3週間固定することがあります。基本的には手術を行わない保存的治療が選択されますが、保存療法を行ったあとに不安定性が残存した場合は手術が検討されます。
基本的な考え方は過剰な内出血を抑えることと、それ以上靭帯などの組織を痛めないことが目的です。
Rest(安静):まず運動を中止して安静を保つようにします。むやみに患部を動かさないようにテーピングなどで患部を固定します。
Ice(冷却):氷を入れたビニール袋やアイスバックなどをタオルなどで包み、患部を冷却します。最新の研究では、自然治癒能力の観点から冷却に反対する意見もありますが、過度な内出血や痛みを抑えるという点ではケガをした直後は有効と考えられます。
Compression(圧迫):患部に弾性包帯やテーピングなどを巻いて圧迫ぎみに固定し、腫れや内出血を最小限に抑え、患部を安静にします。固定が強すぎると血流障害や神経障害を起こすため、しびれや皮膚・爪の色(青白くないか)を確認しながら行います。
Elevation(挙上):クッションなどを使って、患部を心臓より高い位置に保ちます。これにより内出血による腫れを防ぐことができます。これを行うことで安静も確保できます。
捻挫をしたときには、速やかにRICE処置を行い、医療機関で適切な検査や治療を受けることが大切です。ただし、ケガをしたあと、数日経過したのに冷やし続けるのはケガをした部位の自然治癒能力を低下させるのでやめましょう。
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