
エコー下注射療法
エコー下注射療法
これらの注射治療は概念や呼び方に様々な形式があり、このページで説明します。かなり長くなるので、必要な部分だけ読んでいただければ幸いです。
超音波エコーを用いたハイドロリリースは新しい治療法で、超音波エコーを用いないトリガーポイント注射やブロック注射は以前から行われていた注射といえます。超音波エコーの普及でこれらの注射は見直されるようになりました。一方で、ハイドロリリース、トリガーポイント注射、ブロック注射などの境界線は曖昧なもので重なる部分もあり、うまく分類できないこともありますのでご了承ください。なお、本ページでは日本整形内科学研究会の定義を引用します。
ハイドロリリース (Hydororelease,HR)は、Hydro(液体)でRelease(剥離・緩める)する”注射手技”を意味します。ハイドロリリース (Hydororelease)という言葉自体には注射の対象部位を示す意味は含まれていないため、対象部位を示す言葉と組み合わせて使用されます。例えば、ファシア(Fascia)を対象にしたハイドロリリース (Hydororelease)を「ファシアハイドロリリース」と呼びます。末梢神経を対象とすれば「末梢神経ハイドロリリース」、靭帯を対象とすれば「靭帯ハイドロリリース」となります。*使用される液体は、多様です。一般的な局所麻酔薬を使ったブロック注射と区別するために、生理食塩水など、局所麻酔薬の使用を最小限にした意味として使われる傾向にあります(日本整形内科学研究会から抜粋)。
筋膜とは筋肉を包んでいる膜で、この膜と筋肉がくっついて固まってしまった状態になると、筋肉の動きが悪くなり、痛みやコリの原因となります。この固まってしまった筋肉と膜を剥がすことを目的とした治療を筋膜のハイドロリリース(筋膜リリース)といいます。ただ、筋膜の周辺には神経や腱、靭帯などが存在することがあるため、筋膜リリースは同時にそれらのリリースになっていることもあり、表現がややこしくなる原因にもなっています。
ハイドロリリースは、超音波エコーで注射針を見ながら「生理食塩水」と呼ばれる人体に使える水とわずかな麻酔を痛みがある部分に直接注射して薬を入れていく注射療法です。
固まっていた筋肉と膜が剥がれ、固まっていた筋肉が柔らかくなると、痛みといった症状が改善することが期待されます。
神経も同じように治療をすることで、神経痛や痺れも解消できる効果が確認されています。この治療法で症状が一時的にでも改善することができれば、痛みの原因がその周辺にあると判断できます。
しかし、ハイドロリリースにより一時的に痛みがなくなったとしても、今までの生活習慣や身体の使い方を変えることがなければ、症状は今までと同じように繰り返し現れてしまいます。
そのため、ハイドロリリースだけで痛みを改善するのではなく、運動やリハビリなど取り入れることで筋肉をつけ、再び同じ症状が出てこないようにする必要があります。
痛みのある部位(トリガーポイント)に行う注射行為には、トリガーポイント注射とトリガーポイントブロックがあります。これには、生理食塩水などを用いた「注射」と局所麻酔薬を用いた「ブロック」と分けられます。「ブロック」という名称は、局所麻酔薬を組織に浸潤させることで神経伝達を「ブロック」する意味で使用され、神経自体を標的とすれば神経ブロックとなります。トリガーポイント「注射」には、生理食塩水だけではなくブドウ糖液などを用いた方法も実施されています(日本整形内科学研究会から抜粋)。
トリガーポイント「注射」やハイドロリリースの場合、腱・靭帯・筋膜や神経とそれを包む膜を剥がす目的で使われているため、わずかな麻酔薬が入っている「生理食塩水」を注射します。そのため、今までの痛み止めの注射と違い、副作用のリスクや身体への負担が比較的少ない治療法であると言われています。
「肩が痛い」「腰が痛い」「肘が痛い」「膝が痛い」といった症状はありませんか?物理療法で楽にならない、物理療法で一時的には良くなるけれどもすぐに元通りになってしまう等で困ってませんか?
ハイドロリリースやトリガーポイント注射、ブロック注射を使い分けることで、筋肉や神経とその膜が固まっていることで痛みが出ている場合に、治療することで痛みが改善されることが期待されます。
注射後、劇的に痛みの取れる患者さんが時々います。ですが、軟骨の変性の患者さんなどでは注射の効果で痛みを止めているだけで根本的な解決はできていないことがあります。以前、膝の痛みに対して注射をしたら膝の痛みが劇的に良くなった患者さんのお話です。あまりのうれしさに、帰宅して今までできなかった草むしりをやったところ、翌日には今まで以上の痛みが出てきたと再受診されました。注射で痛みは楽になって、歩いたりしゃがんだりできるようになっても、それまでの生活で出来んなかったことを急にはやらないでください。リハビリや処方などを行いながら徐々にできることを増やしていきましょう。
残念ながら一回の注射で全てが解決するわけではありません。痛みの部位に適切な注射を行うと効果が現れることが多いですが、近くの別の部位由来の痛みが残ったり、注射の効果が数日しか持たないこともあります。場所によって異なりますが、一般的には膝では3回前後、肩では5回前後は注射を受けて徐々に効果を確かめるものと思ってください。
メリット
超音波エコーでは、筋肉とそれを包む膜を正確に確認することができます。
患者さんの痛みの部分をリアルタイムに画像と一緒に確認できるため、正確に注射で薬を入れる場所を決めることができます。
また、痛みのある部分に直接薬をいれるので、早い段階での痛みの緩和が期待されます。
使用する薬液は、ハイドロリリースやトリガーポイント注射では生理食塩水とわずかな麻酔薬を使用しているため、アレルギー反応や副作用といった心配がなく患者さん自身の体への負担が少ないです。
デメリット
治療は注射でおこなうため、痛みが伴い、出血や腫れを起こす場合があります。出血による腫れは数日で軽減して、徐々に紫色から黄色になって消退します。
また稀ではありますが、注射部位から感染を引き起こしてしまうこともあります。糖尿病、関節リウマチや免疫抑制剤を使用している患者さんは申し出てください。状況に応じて感染対策をとりながら注射を行います。
ブロック注射では麻酔薬を用いますが、重度の副作用が生じることは稀です。(麻酔薬中毒やアナフィラキシーショックなどの重度の副作用に対する対応を準備した上で使用しています。)
神経ブロックは、痛みの原因となっている神経の周囲や神経に直接、神経の興奮伝導を鎮める局所麻酔薬と炎症を抑えるステロイドを投与し、強い痛みを抑える治療法です。
神経ブロックの種類や施行する回数は、痛みの原因や症状、部位によって異なりますが、繰り返し行うことで、痛みを起こす神経の周りの筋肉や関節などの炎症を抑え、血流を改善することにより、徐々に痛みを軽減していきます。また、神経や痛みの原因とされる部位を手術で切除したりすることはありません。
準備中です。
脊椎のトンネル内を通っている脊髄の周辺に局所麻酔薬を注入する方法です。脊髄は硬膜という文字どおり強固な膜によって守られています。
その膜の外側の硬膜外腔というスペースにブロック用の針を進め、局所麻酔薬を注入することによって、脊髄付近の炎症を鎮め、痛みを和らげます。脊髄から分岐した脊髄神経根の神経伝達が遮断され、支配領域の血管拡張、筋緊張緩和、鎮痛剤の効果が得られます。
トリガーポイントとは、特に強く傷みを感じるポイント(押すと痛い部分)のことです。
多くのトリガーポイントは、直接的な外傷や慢性の筋肉疲労などが原因で発生し、筋肉、または筋膜が緊張している部位に存在します。腱や肩などの関節の炎症でもトリガーポイントが腱や滑膜・滑液包の周囲に形成されることがあります。
長時間、同じ姿勢や無理な姿勢を続けるなどして、慢性的に筋肉に負担がかかるようになると、筋肉の中に痛みを感じる部分ができます。その部分がトリガーポイント(強く傷みを感じる点)です。このトリガーポイント(圧痛のある部位)に局所麻酔薬とステロイド薬を注入して、痛みを取り除く方法がトリガーポイント注射です。
痛みの悪循環を遮断し、血流を改善や筋肉の緊張を和らげ、体内の痛みの原因となる物質を除去します。ポイントは、慢性痛が形成される前に早めに処置を行うことが大切です。
問診・診察
問診・診察・触診から、患者さんの痛みの原因となっている筋肉・筋膜、神経の部分を見つけていきます。
超音波エコー検査
痛みのある部分に実際に超音波エコーを当て、原因となっている部分を画像で見つけていきます。場所が特定できたら注射をする位置を決めます。
注射による治療
画像を見ながら、注射の針先を原因となっているところにもっていき、薬を注入していきます。リアルタイムに画像で確認できるので、より正確に治療を行うことが期待されます。
薬を注入したあと、特に体に異常がなければそのままご帰宅することができます。
また、ご帰宅後に安静に過ごすというような制限は特にありません。関節内の注射では入浴の制限などを行っていましたが、この注射は関節の外に行うため、予防接種などと同じで入浴の制限はありません。
ブロック注射は神経により費用が異なります。
1割〜3割負担の金額です。
これ以外に診察料や検査料、超音波エコーの料金などが加算されます。
ハイドロリリースは数年内に値上がりする可能性が高いです。
注射の種類 | 1割 | 2割 | 3割 |
---|---|---|---|
ハイドロリリース | 70円 | 140円 | 210円 |
大腿神経ブロック 坐骨神経ブロック 正中神経ブロック 尺骨神経ブロック 腋窩神経ブロック 橈骨神経ブロック 仙腸関節枝神経ブロック 頸・胸・腰椎後枝内側枝神経ブロック 脊髄神経前枝神経ブロック |
90円 | 180円 | 270円 |
腕神経叢ブロック 浅頸神経叢ブロック 肩甲背神経ブロック 肩甲上神経ブロック 外側大腿皮神経ブロック 閉鎖神経ブロック |
170円 | 340円 | 510円 |
仙骨部硬膜外ブロック | 340円 | 680円 | 1,020円 |
神経根ブロック | 1,500円 | 3,000円 | 4,500円 |
トリガーポイント注射 | 70円 | 140円 | 210円 |
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