
リウマチ・膠原病
リウマチ・膠原病
膠原病は、免疫(バイキンなどを退治してくれるガードマン)が正常な体の部分を攻撃してくる疾患で、関節リウマチは膠原病の一種類と言えます。関節リウマチ・膠原病は全身の臓器に炎症をきたし、様々な症状が現れてきます。整形外科を受診される膠原病に共通してみられる症状は関節の痛みで、関節が腫れたり、熱を持ったりすることもあります。膠原病の多くは原因不明の難病で、以前は完治の難しい病気とされてきましたが、近年は新たな薬の開発や治療法の進歩により、ほとんど症状がみられなくなる「寛解状態」を目指せる疾患もでてきました。とくに関節リウマチは、関節の変形と破壊を引き起こして徐々に進行していく病気ですが、早期の診断と抗リウマチ薬や生物学的製剤、JAK阻害薬を中心とした適切な治療によって、関節の炎症も治まり、通常の日常生活を送ることができる時代になっています。関節リウマチは膠原病の中で最も患者数が多い病気です。関節痛が続く、起床時に関節がこわばる、手指・手首・足の関節に腫れがみられるといった症状があれば、お早めにご相談ください。
喫煙、ストレスや感染症、紫外線への曝露、歯周病、粉じんの吸入、外傷や手術、妊娠などの刺激が危険因子と言われています。関節リウマチはこれらの環境因子の他に遺伝的な因子も関与していると言われています。ご両親・ご兄弟が関節リウマチの場合、関節リウマチになる確率が高くなることがあります。したがってご家族の膠原病歴も重要な所見と考えます。リウマチや膠原病の発症後であっても、危険因子を避けることが重要といわれているため、禁煙を始めとして、ストレスや刺激の軽減をお勧めします。
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関節リウマチの検査には血液検査と画像検査があります。
血液検査
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リウマトイド因子(RF)抗環状シトルリン化ペプチド抗体(抗CCP抗体) MMP-3(マトリックスメタロプロテアーゼ‐3) CRP(C反応性タンパク) ESR(赤血球沈降速度[血沈、赤沈]) 、一般的な血液検査項目などを行います。
リウマチ以外の膠原病と鑑別するための検査・・・詳細はこちら
画像検査
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血液検査の他に画像検査を行い、関節の状態や炎症の程度を調べます。画像検査には、Ⅹ線検査、MRI検査、関節超音波エコー検査などがあります。特に超音波エコーは安全に、簡便に検査ができて炎症の度合いを見ることができる検査です。
関節リウマチは骨粗鬆症のリスクファクターの一つです。関節リウマチのないかたよりも骨密度が低下していく可能性があり、骨密度の検査などを定期的に受けるようにしましょう。
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リウマチの治療は薬物療法とリハビリテーションになります。リハビリテーションは痛みに対する治療として行いますが、関節リウマチでは他の目的もあります。関節の痛みや変形のために日常生活に支障がでることがあるため、痛みだけでなく機能を改善するという目的でのリハビリテーションも併用していきます。
上記の薬剤の使用に関しては別途血液検査と胸部のレントゲン検査が必要です。これらの薬剤は免疫(体のガードマン)を抑えるため、それまで隠れていた病気が出現することがあります。例えば、B型肝炎やC型肝炎、カンジダ(カビの一種)などです。また、副作用として肺の障害がでることもあります。それらの評価のために必要な検査を行います。
関節痛で整形外科を受診されて、実は膠原病だったという経験がしばしばありました。関節リウマチ以外では、リウマチ性多発性筋痛症、乾癬性関節炎、脊椎関節炎、全身性エステマトーデス、全身性強皮症、多発性筋炎/皮膚筋炎、シェーグレン症候群、混合性結合組織病、などが挙げられます。これらの疾患の評価を行い疑わしい場合は専門家のいる大学病院などへ紹介いたします。
頸部(くび)、肩、腰部、大腿などに痛みやこわばりを生じる原因不明の炎症性疾患です。こわばりや痛みで「痛くて寝返りがうてない」「痛みやこわばりで起き上がれない」「肩や腕があがらなくなった」などの症状が現れます。関節痛は手指や足趾(足の指)などの小関節よりも肩や股関節などの大関節にみられ、関節の腫脹は比較的少ないことが、関節リウマチと異なる点です。全身症状としては発熱、全身倦怠感、食欲低下、抑うつ状態、体重減少を認めます。
乾癬という皮膚疾患に合併する病気で、関節や腱付着部、指に炎症をきたす病気です。原因は不明で30~50歳代に多く、男女比はほぼ同じです。日本人では乾癬の患者さんの10~15%に発症するといわれています。乾癬性関節炎では乾癬の皮膚病変を多く認めます。乾癬は、髪の生え際や肘、膝、でん部などに多く出現し、発疹と、銀白色のフケのような鱗屑(りんせつ)を認めます。
脊椎関節をはじめとする胸鎖関節、仙腸関節などの体幹部の関節と、手指関節などの末梢関節に炎症が生じる病気です。炎症性腰背部痛(安静で軽快せず、むしろ運動で改善する腰痛・背部痛)が脊椎関節症に特徴的な症状の一つです。また手指・肩などの痛みや腫れ、こわばりといった症状も伴います。発熱や倦怠感を伴うこともあります。
全身の様々な臓器に炎症や障害を起こす自己免疫疾患で、関節、皮膚、腎臓、神経などを中心に症状が現れます。原因は不明で、20~40歳代の女性に発症しやすいとされています。発熱、全身倦怠感などの全身症状、関節痛、皮疹、光線過敏症、脱毛、口内炎など多彩な症状がみられます。最も特徴的なのは蝶形紅斑と呼ばれる両側の頬部と鼻に広がる皮疹です。重症の場合、ループス腎炎と呼ばれる腎臓の障害や神経精神症状などを生じるケースもあります。
全身性の自己免疫疾患で涙や唾液を作っている臓器に炎症を起こします。原因は不明ですが40~60歳代の女性に発症しやすいといわれています。症状としては、目の乾燥(ドライアイ)、口腔乾燥(ドライマウス)、膣乾燥(ドライバジャイナ)などが挙げられます。乾燥症が主体となりますが、全身倦怠感、関節痛、皮疹、光線過敏症、間質性肺炎、神経障害、腎障害、筋症状、血液検査異常なども生じることがあります。
血液検査の項目 | 主な目的・対象疾患 |
---|---|
抗核抗体(ANA) | 多くの膠原病(特にSLE、MCTD、全身性強皮症など) |
抗ds-DNA抗体 | SLEに特異性が高い |
抗Sm抗体 | SLEに特異性が高い(感度は低い) |
抗RNP抗体 | MCTD(混合性結合組織病) |
抗SS-A(Ro)/SS-B(La)抗体 | シェーグレン症候群、SLE |
抗Scl-70抗体 | 全身性強皮症(特にびまん型) |
抗セントロメア抗体 | 限局型強皮症(CREST症候群) |
抗Jo-1抗体 | 多発性筋炎/皮膚筋炎(特に抗合成酵素症候群) |
リウマトイド因子(RF) | 関節リウマチ、他の膠原病でも陽性の場合あり |
抗CCP抗体 | 関節リウマチに特異性が高い |
補体(C3、C4) | SLEで低下することが多い |
CRP、赤沈(ESR) | 炎症の活動性評価(非特異的) |
白血球・血小板・貧血の有無 | 活動性や血液障害の評価 |
筋酵素(CK、LDH、AST、ALT) | 多発性筋炎・皮膚筋炎で上昇することがある |
関節リウマチとは、本来は体を守るために働く免疫系に異常が起こり、正常な細胞などを攻撃してしまう「自己免疫疾患」の一つです。関節の滑膜(かつまく)などに炎症が生じ、こわばり、痛み、腫れなどの症状が現われます。主に手足の関節で起こり、進行すると関節の骨や軟骨が破壊され、変形による機能障害をきたすようになります。
免疫系に異常が起こると、関節の毛細血管が増加し血管内から関節の滑膜組織に白血球(リンパ球やマクロファージなど)が出現します。これらが産生するサイトカイン(TNFα、IL-6など)と呼ばれる物質の作用により、関節内に炎症反応が起こり、滑膜細胞が増殖して、痛みや腫れが生じます(関節炎)。さらに関節液が増加していくと、破骨細胞(はこつさいぼう:古い骨を吸収し骨の新陳代謝を担う細胞)も増殖して過剰に活性するため、軟骨や骨の破壊が進んでいきます。
日本での関節リウマチの有病率は0.6~1.0%で、患者数は約70万~90万人と推計されています。男性よりも女性に多い傾向があり、好発年齢は40~60代とされていますが、近年は診断技術の向上などにより、男性で早期に発見されるケースも増えています。また、高齢化の影響でさらに高齢で発症するケースも増加しています。80歳代で関節リウマチを発症したという患者さんが時々いらっしゃいます。
関節リウマチは、以前は完治の難しい疾患でしたが、新しい薬や治療法の登場により、その治療は劇的に進歩しています。早期の診断と抗リウマチ薬を中心とした適切な治療によって、疾患の活動性をしっかり抑えることが可能となり、その結果、関節の炎症がほとんどない状態(寛解)をめざせるようになっています。関節に気になる症状がありましたら、お早めにご相談ください。
よく知られている症状が関節の痛みで、現れやすいのは手足の指の関節や手首・足首です。指先から数えて2番目の第2関節や指の付け根、手首、足首の関節が柔らかく紡錘(ぼうすい)状に赤く腫れたり、痛んだりすることが多くあります。肘、肩、膝などに同様の症状がみられることもあります。
痛みの程度や場所はそれぞれで、身動きができないほどの強い痛みが現れる方がいる一方、「今日は指が少し痛かった」「昨日はどこも痛くなかった」「3日前は足関節が痛かった」など、日ごとに変わる方も少なくありません。1つの関節にとどまらず、複数の関節に症状が現れる場合は、関節リウマチの疑いが濃厚になります。
朝起きたときに手足が動かしにくい「朝のこわばり」も有名な症状です。この症状も程度は様々で、体中がこわばって布団からなかなか出ることができない方もいれば、手の指だけが曲げにくくこわばった感じがする、むくんでいる感じがするという方もいらっしゃいます。
こうした関節の症状は、関節の中の滑膜に炎症が起きて、骨や軟骨を溶かしていくことで生じます。はじめは軽い痛みであっても、進行するにつれて段々と痛みが強くなり、関節が動かなくなったり特有の関節変形が起きたりします。
だるさや微熱、貧血、食欲不振、体重減少といった全身症状が見られることもあります。また、目や口腔内に乾燥をきたすシェーグレン症候群などの自己免疫疾患を合併するケースもしばしばあります。
関節リウマチは放置してしまうと徐々に関節が破壊され、日常生活に支障が出てきます。半年以上痛みのある状態が続くと、骨が溶けて変形が始まると考えられていますので、痛みを感じたらなるべく早く(症状が出てから12週間以内)受診していただき、適切な治療を開始することをお勧めします。
関節リウマチは、関節の症状の変化に加え、血液検査と画像検査の結果をみて総合的に診断します。また、炎症が起きている部位によっては関節リウマチ以外の類似疾患(膠原病など)を疑うこともあります。
血液検査
血液検査で重視するのは、リウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体といった体の成分に反応する自己抗体です。いずれも関節リウマチの多くで陽性を示しますが、両方が陰性でも関節リウマチである場合や、逆に陽性でも関節リウマチでない場合もあるので注意が必要です。活動性の指標として、炎症を反映するCRPやESR(赤沈・血沈)、関節破壊と相関するといわれているMMP-3なども参考にします。また、関節リウマチは貧血を合併しやすくなりますので、貧血に関連する項目も確認します。一般的に貧血の状態になると、赤血球数、ヘマトクリット(Ht)値、ヘモグロビン(Hb)値が低下します。
画像検査
X線検査(レントゲン検査)
基本的な画像検査で、関節や骨の状態を確認します。痛みのある部位は全て撮影します。軽い痛みでも手足の骨・頚椎(首)のリウマチ様変形が出現していることがあるため手足と肺のレントゲン検査を行います。また、頚椎のリウマチ様変形は神経の障害を生じることがあるため、頚部の症状が軽くでもあれば早期にレントゲン撮影を行います。また、リウマチによる肺の障害が生じることがあるため肺のレントゲンも撮影します。そのため関節リウマチの検査では通常の病気や怪我よりも多くの部位のレントゲンを撮影します。
MRI検査
骨の状態を高感度に確認でき、滑膜や関節の周りの筋肉や靭帯、軟骨といった骨以外の組織の炎症や腫れを確認することができます。
関節超音波(エコー)検査
MRIよりも簡便で情報量の多い検査です。関節の炎症をリアルタイムで確認することができ、骨の破壊も高感度にみることができます。
薬物治療
薬物治療では、発症早期から免疫異常を改善する「抗リウマチ薬」を開始し、必要に応じて、痛み・炎症を軽減する鎮痛薬(非ステロイド抗炎症薬)やステロイド(副腎皮質ステロイド)を使用します。
鎮痛薬は関節リウマチ自体の進行や骨・関節の破壊を抑制することはできませんが、内服すると速やかに効き目が現れることから、患者さんの日常生活の維持に役立ちます。また、ステロイドは強い抗炎症作用がありますが、関節リウマチに対する効果は限定的であり、様々な副作用もあるため、その使用はあくまで補助的です。
薬物療法の中心に位置づけられているのがメトトレキサート(MTX)です。免疫抑制作用を有する抗リウマチ薬で、診療ガイドラインでも関節リウマチの診断とともに、まずはメトトレキサートの使用を考慮することが推奨されています。年齢、腎機能、肺合併症などを考慮し、副作用に気を付けながら継続していきます。疾患活動性が高い場合やMTXで効果不十分の場合には、抗TNF製剤、抗IL-6受容体抗体などの生物学的製剤やJAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬を使用することで、疾患の活動性をしっかり抑えることができます。これらの抗リウマチ薬が登場したことによって、高い治療効果が期待できるようになり、関節の炎症がほとんどない寛解をめざすことが可能になっています。
運動器リハ・外科的治療
筋肉の衰えや動きの悪くなった関節の可動域を改善するリハビリテーションも、必要に応じて行われます。また、治療の効果が早く現れるようにするための運動器リハも有効と考えられています。また、リウマチニョル痛みや関節の変形のために日常生活に支障がでることがあります。それの機能回復をめざして運動器リハを行っています。
関節の破壊や変形が進行してしまった場合に行う手術も進歩しています。人工関節に置き換える手術や腱の再建手術によって痛みが軽減し、歩くことが可能になるなど、QOL(生活の質)の向上が期待できます。
症状が強いときは安静にして、関節を保護することが重要です。症状が落ち着いてきたら、適度な運動や運動器リハを行い、筋力や関節の動きを維持しましょう。感染症には常に注意が必要となります。喫煙や歯周病は、治療効果にも影響するため、禁煙し、歯周病はしっかり治療しましょう。
関節リウマチは一生付き合っていく病気です。当院は通いやすさと親しみやすさを兼ね備えたクリニックをめざし、リウマチ・膠原病の専門診療を行っています。関節リウマチをはじめとする膠原病の症状が疑われる場合は、お気軽にご相談ください。
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