
股関節・骨盤・膝の痛み
股関節・骨盤・膝の痛み
股関節は足の付け根にある大きな関節です。太もも側の大腿骨頭(だいたいこっとう)が、骨盤側のお椀の形状をした寛骨臼(かんこつきゅう)にはまり込み、大腿骨と骨盤をつないでいます。寛骨臼と大腿骨頭の表面は軟骨に覆われ、その周りは関節包に包まれています。
変形性股関節症は、先天性の疾患や外傷によって関節に過度な負担がかかり、軟骨の破壊や軟骨と骨に変形が起きる疾患です。多くは、先天性股関節脱臼や先天性臼蓋形成不全などの発育性股関節形成不全が原因となりますが、加齢変化や体重増加によって発症するケースもあります。女性に多くみられる疾患です。
関節軟骨がすり減ることで炎症が起き、初期には立ち上がりや歩き始めに足の付け根に痛みを感じます。足の爪切りができない、靴下が履きづらい、正座や和式トイレが困難といった支障を来すこともあります。進行すると痛みが強くなり、持続痛や夜間痛(夜寝ていても痛む)が現れてADL(日常生活動作)障害も大きくなります。
関節の変形の進行度は、前期・初期・進行期・末期に分類されますが、股関節の可動域や痛みには個人差があります。変形が進んでいたとしてもすぐに手術が適応されるわけではなく、痛みの程度や生活面での不自由さを考慮しながら治療を選択します。痛みが少なく、日常生活にも不自由がない場合は、保存的治療を選択し、股関節周囲の筋肉を鍛える運動器リハが中心となります。炎症や痛みを抑える薬剤を用いることもあります。保存的治療で改善しない場合、骨を切って股関節を整える骨切り術や、股関節をインプラントに置き換える人工股関節置換術が検討されます。このような手術を検討する際は、手術後のライフスタイルについて担当医と十分話し合うことが大切です。
坐骨神経は、人体のなかで最も太くて長い末梢神経で、腰椎(背骨の腰の部分)から出ているいくつかの神経根が束になって集まり、足の先までつながっています。
坐骨神経が圧迫・刺激されると、腰、でん部(尻)、太もも、ふくらはぎ、膝の裏、すね、足裏、足指などに電気が走ったような痛みやピリピリしたしびれ、麻痺などが起こります。これが坐骨神経痛です。坐骨神経痛とは、特定の疾患の名称ではなく、これらの症状すべてを指す総称です。症状を引き起こす疾患には、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、梨状筋症候群、仙腸関節炎などがあります。若い方には「腰椎椎間板ヘルニア」や「梨状筋症候群」が多く、ご高齢の方には「腰部脊柱管狭窄」や若い方と同様に「腰椎椎間板ヘルニア」が多くみられます。
上記のような疾患によって坐骨神経の障害があると、痛み・しびれ以外にもさまざまな症状があります。足の裏の感覚がおかしい、紙を一枚はさみ込んだような変な感じがする時もあります。足がつりやすい(こむらがえり)、冷たい感じがする、歩きにくいなどのうったえのこともあります。スリッパがすぐに脱げて使いにくい、転びやすいなどの症状があると重症といえます。
坐骨神経痛・障害の治療は、原因の疾患にかかわらず、まずは症状を緩和する対症療法が主体となります。治療は薬物療法と運動器リハが主体となります。薬物療法で神経の炎症を抑えたり、運動器リハで腰回りやお尻の筋肉、太ももや下腿の筋肉を柔らかくすることで症状を和らげます。検査ではレントゲンで背骨・腰骨の変形や、隙間がせまさを確認します。症状が強い場合はMRIで背骨・腰骨の中をより詳しく調べます。保存的治療を開始し、それらを十分に行っても痛みが改善しない場合は、超音波エコーを用いたブロック注射などを検討します。また、歩きにくさが強い、転びやすいなどの症状や、尿・排便などに障害が現れた場合には手術が検討されます。
似たような症状の疾患で重要なものに、下肢の血行障害があります。これは重症の場合には、緊急性があることがあります。当院では足の血行障害を疑う場合は下肢の血管の検査も行います。足のさまざまな症状を感じた時はお気軽にご相談ください。
前十字靭帯(ACL)は、膝関節の中心部で大腿骨(だいたいこつ:太ももの骨)と脛骨(けいこつ:すねの骨)をつなぐ、強靭な靭帯であり、後十字靭帯と十字に交差して膝関節を支えています。脛骨が前へずれないように機能するとともに、膝関節が滑らかに動くように補助する役割を担っています。この靭帯が損傷、または断裂することを前十字靭帯損傷(ACL損傷)といいます。スポーツの活動中などに、一度の大きな外傷で発生し、あの瞬間に痛めたということがわかります。ラグビーや柔道で、選手同士の接触により膝を強くひねったり、バレーボールやバスケットでのジャンプ着地時に強い衝撃を受けたり、サッカーやバスケットでの急な方向転換などが原因で起こります。スキーの転倒などでも多い膝の外傷です。
靭帯を損傷すると、動けなくなるほど激しい痛みが生じ、断裂するとそこからの出血が関節内にたまり、腫れが目立つようになります。膝の屈伸も困難になってきます。
通常、2週間から1カ月程度で痛みは引いていき、日常生活に支障がない程度まで改善がみられますが、痛みが引くことと損傷の修復とは関係がなく、靭帯断裂はそのまま状態です。治療をせずに放置してしまうと、歩行障害や膝がガクッと崩れたり、膝の力が抜けたように感じる“膝くずれ”という症状を起こします。この膝崩れを繰り返すと半月板や軟骨の損傷を招き、変形性膝関節症に発展してしまうこともあります。このようなことがありますので、痛みがなくなったとしても、軽視せずに整形外科できちんと治療することが大切です。
以前はスポーツをする患者さんに対してのみ手術を行うことが多かったのですが、近年は手術技術や器材の発展により、若い患者さんは原則手術を勧められますし、中高年の患者さんでもスポーツや仕事などで活動性の高い場合は手術を検討します。手術は、他の組織(ハムストリングス腱や膝蓋腱)を移植して前十字靭帯を作り直す前十字靭帯再建術を行います。再建は低侵襲な関節鏡視下手術によるものであり、手術後は早い段階から可動域・筋肉訓練や運動器リハを行います。
当院の院長は2か所の総合病院でスポーツ整形の手術環境・リハビリ環境を整えた経験があり、また、当院にはスポーツ整形で有名な病院で運動器リハを担当していたPT(理学療法士)が在籍しております。当院では、これらの経験を元に患者さんごとに最適なプログラムを作成して手術前・手術後の運動器リハを提供いたします。
後十字靭帯(PCL)は、大腿骨(だいたいこつ:太ももの骨)と脛骨(けいこつ:すねの骨)をつなぐ膝関節内の靭帯で、強い強度を有し、前十字靭帯と十字に交差して膝関節を支えています。膝関節のひねる動作を支えたり、脛骨が後ろへずれないように支えたりする働きがあります。この靭帯が損傷、または断裂することを後十字靭帯損傷(PCL損傷)といいます。
後十字靭帯損傷は、膝から下の部分が後方に押し込まれるような強い力がかかったときに発生します。膝を直角に曲げた状態で、地面に強く膝の前面を打ち付けたり、ラグビーのようなコンタクトスポーツで、正面から膝下にタックルを受けたり、交通事故で車が急停車してダッシュボードに膝(脛骨の上端部)がぶつかり強い衝撃を受けたりすることで起こります。
損傷すると激しい痛みが起こり、膝の曲げ伸ばしがうまくできないといった可動域制限とともに、膝全体に腫れが生じます。膝裏を押さえると痛みを認めます。また、放置した場合や損傷の仕方によっては、膝関節に不安定性を残すことがあります。
損傷の程度や患者さんの生活状況によって治療法は異なりますが、強い不安定性のない部分損傷の場合、保存的治療を行うことが一般的です。脛骨が後方にずれないように装具やテーピングで固定し、運動器リハで可動域の回復や筋力の増強を行うことで後十字靭帯の機能を補います。一方、不安定性が残ってしまった場合は、関節鏡視下手術による再建が勧められます。
当院の院長は2か所の総合病院でスポーツ整形の手術環境・リハビリ環境を整えた経験があり、また、当院にはスポーツ整形で有名な病院で運動器リハを担当していたPT(理学療法士)が在籍しております。当院では、これらの経験を元に患者さんごとに最適なプログラムを作成して手術前・手術後の運動器リハを提供いたします。
半月板は、大腿骨(だいたいこつ:太ももの骨)と脛骨(けいこつ:すねの骨)の間に存在する軟骨性の板で、左右の膝関節に2枚ずつあります。半月と名付けられていますが、実際はアルファベットの「C」に似た形状で膝の内側と外側にあり、膝のクッションとして機能し、周辺の関節軟骨を保護する役割を担うほか、膝の安定化や脚の屈伸もサポートしています。この半月板が傷ついてしまった状態を半月板損傷といいます。膝をひねったときに大きな力や衝撃が加わると起きやすく、スポーツで、ジャンプしたときの着地に問題があった場合や、サッカーやバスケットボールなどで急な切り返しをしたときによく起こります。ときには、前十字靱帯の損傷に伴って、半月板も一緒に損傷する場合もあります。
また、半月板は加齢とともに変性するため、中高年になると急ぎ足や段差を越えたときなど、ちょっとした動作でも損傷することがあります。変形性膝関節症に伴って内側の半月板損傷が起きる場合もあります。
半月板を損傷すると、膝の曲げ伸ばしの際に痛みやひっかかり感が生じます。ひどくなると膝に水がたまって腫れたり、急に膝が動かなくなるロッキングという状態を起こし、激しい痛みで歩けなくなったりすることもあります。一旦損傷すると自然治癒する可能性は低く、放置すると損傷が大きくなり症状が増悪します。
治療には保存的治療と手術治療があります。保存的治療ではテーピングやサポーターで患部を固定し抗消炎剤・鎮痛剤などを用いるほか、運動器リハを行います。中高年の変性断裂の場合はヒアルロン酸の関節内注射を行うこともあります。一方、スポーツなどの怪我によって生じた半月板損傷や保存的治療で改善しない場合には、関節鏡を用いた手術治療を行います。手術は損傷した部分を切り取る切除術と、損傷した部分を縫い合わせる縫合術があります。
手術をする場合も、行わない場合も運動器リハは必要となります。当院の院長は2か所の総合病院でスポーツ整形の手術環境・リハビリ環境を整えた経験があり、また、当院にはスポーツ整形で有名な病院で運動器リハを担当していたPT(理学療法士)が在籍しております。当院では、これらの経験を元に患者さんごとに最適なプログラムを作成して手術前・手術後の運動器リハを提供いたします。
膝関節内の軟骨が傷んだり、剥がれ落ちたりする疾患で、骨が未熟な成長期の小中学生男児に比較的多くみられます。膝の大腿骨(太ももの骨)の外側よりも内側に発症することが多く、まれに膝蓋骨にも起こります。スポーツなどで繰り返される軟骨へのストレスや強い衝撃によって、軟骨の下の骨に負荷がかかることが原因と考えられています。
初期は、運動後に膝の不快感や鈍痛がある程度でほかに特異的な症状はなく、痛みがあっても運動はできます。しかし進行して軟骨の表面に亀裂や変性が生じてくると痛みが強く現れ、スポーツなどに支障がでてきます。軟骨が剥がれて軟骨片が関節の中に遊離すると、膝の曲げ伸ばしの際に引っかかり感やズレ感が生じます。大きな軟骨片が遊離すると膝の中でゴリッと音がしたり、関節に挟まると膝がロックして動かなくなったりすることもあります。
早期に診断がつけば安静や免荷(荷重をかけないこと)などで自然治癒が期待できますが、軟骨の損傷が進行したり、剥がれたりしてしまうと手術による処置が必要となります。早期に発見して治療することが重要な疾患です。スポーツをしている子どもの膝の痛みで放置されたために将来に軟骨変性を残す危険性があるため、異常を感じた場合はレントゲンや超音波エコー検査などで診断を受けましょう。
変形性膝関節症は、日本人では比較的女性に多くみられ、高齢になるほど罹患率が高くなります。主な原因は加齢による軟骨の質の低下で、軟骨がすり減ったり、なくなったりして膝の形が変形し、痛みや腫れを生じます。骨折・外傷などの怪我や半月板損傷の後遺症として発症することもあります。また、膝関節には体重の数倍の負荷がかかっているため、肥満も要因の一つになります。初期の症状は、立ち上がりや歩き始めの動作で痛みを生じる程度ですが、進行すると歩行や階段の昇降、膝の屈伸が難しくなり、痛みも増して日常生活に大きな影響がでてきます。膝に水がたまることもあります。
初期や軽度の場合、運動器リハや薬物療法(鎮痛剤や漢方)、注射(ブロック注射やヒアルロン酸注射)で痛みを軽減し、日常生活を送ることが可能です。膝を温めるホットパックや低周波などの消炎鎮痛のための物理療法、膝を安定させるためのサポーターや足底板(インソール・足の下の中敷)などの装具療法が有効なこともあります。
重度の場合は手術治療を検討します。手術には関節鏡(内視鏡)手術、高位脛骨骨切り術(骨を切って矯正する)、人工膝関節置換術などがあります。このような手術を検討する際は、手術後のライフスタイルについて医師と十分話し合うことが大切です。また、いずれの手術を受けたとしても、手術後の運動器リハが重要となります。退院後にも継続して膝の可動域訓練や筋力訓練が、動きやすい膝とするために、手術の効果を高めるためには重要です。
膝蓋腱炎は、オーバーユース(使いすぎ)に起因する膝のスポーツ障害で、ジャンプ動作を繰り返す競技でよく見られることから、ジャンパー膝とも呼ばれています。バレーボールやバスケットボールなどでジャンプや着地動作を頻繁に繰り返したり、サッカーの蹴る動作やダッシュなど、膝の曲げ伸ばしを頻繁に繰り返したりするスポーツで多くみられます。走ることが多い陸上競技でも起こります。日常的にスポーツを行う10代~30代の若い世代に好発する疾患です。また、スポーツでなくても体が硬い人などで、体力増進のためにランニングや急に走ったり、歩いたりすることで発症することもあります。主に膝前面に痛みが生じ、初期では局所の安静で治りますが、進行すると慢性化して日常生活でも難治性の痛みが出てしまうこともあります。
太ももの大腿四頭筋(だいたいしとうきん)という大きな筋肉の中には大腿直筋(だいたいちょっきん)という筋肉があります。この大腿直筋は、膝蓋骨(しつがいこつ:膝の皿の部分)を越えて膝蓋腱として膝下の脛骨(けいこつ:すねの骨)につながっています。膝蓋腱炎は、ジャンプ動作や屈折動作を頻繁に繰り返すことで、膝蓋腱に損傷や負担が蓄積して起こると考えられていますが、運動による疲労によって大腿四頭筋の柔軟性が低下することも要因の一つとされています。
検査はレントゲンなどで膝の骨の形状に異常がないか確認します。膝や下肢、足部の異常が原因のことがあるからです。腱の炎症の具合は超音波エコー検査で評価できます。それに基づいて治療計画を立てていきます。
基本的に安静、休養が重要となります。痛みや腫れがひどい場合は消炎鎮痛剤や冷湿布・ブロック注射を用います。また、大腿四頭筋の柔軟性を改善する目的で、大腿四頭筋を伸ばすストレッチも欠かせません。スポーツを行っている方や学生の方は、練習や試合などもあり、十分に膝蓋腱を休ませることができない場合もあります。しかし膝蓋腱炎が悪化すると痛みが続くようになりスポーツをする余裕もなくなってしまいますので適切な治療を早めに行いましょう。
腸脛靭帯とよばれる、大腿(太もも)の外側にある靭帯が炎症することによってランナーズニー(腸脛靭帯炎)が生じます。腸脛靭帯は屈伸運動により、大腿骨外側上顆(膝に近い太ももの外側にある骨の出っ張り部分)の前後に移動するため、ランニングなどの屈伸運動をする際に靭帯と骨に摩擦が起こることで炎症し、痛みが生じます。
主な原因としては、ランニングや足に負担をかけてしまうトレーニング等の過度な運動によるもの(オーバーユース)ですが、ランニングする場所(硬い地面)や足に合わないシューズを履き続けることによっても痛みが生じる場合があります。まずは、少しでも痛みや違和感を感じたら放置せず当院へ受診ください。診察し、原因に合わせた治療・運動器リハを行っていきます。
ベーカー嚢腫は、膝の裏に水が溜まった袋ができる疾患で、痛みなどはなく、ふくらんできた、しこりがあるなどの違和感で受診されることが多いのが特徴です。膝の軟骨障害や半月板損傷に伴って生じることが多いため、中高年に好発します。しかし、4-7歳も好発年齢であり、原因はいまだ不明ですが、椅子が膝裏に繰り返しあたるなどの物理的刺激による、膝下部の滑液包炎であると言われています。すぐに治療が必要なものではありませんが、腫瘍などと区別がつきにくいことがあり、そのような病気と区別(鑑別)するために検査をすることがあります。超音波エコー検査がもっとも簡便に診断ができる検査です。
TOP