静脈瘤と膝の痛み|きしもと整形外科|長久手市の整形外科・スポーツ・リハビリ・ペインクリニック内科

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静脈瘤と膝の痛み

静脈瘤と膝の痛み|きしもと整形外科|長久手市の整形外科・スポーツ・リハビリ・ペインクリニック内科

2025年6月16日

静脈瘤と膝の痛み

Q:三つ目の【静脈瘤】との出会いとはどのようなものでしょうか?

これは患者さんだけではなく、他の科の医師とのつながりの大切さを実感したお話しです。東濃厚生病院という病院に努めているのですが、そこの血管外科のドクターが、私が整形外科の新人だったころの静岡県の病院にもいらしたドクターで、そのドクターと8年ぶりぐらいの再開でした。まさか、岐阜の病院でまたご一緒するとは思ってもいなかったです。

Q:久々に再開された他の科のお医者さんが関係するお話なのですね?

そうです。そのドクターからある日「岸本先生、静脈瘤の治療をすると膝の痛みがよくなることって整形外科ではしょっちゅうあるの?」と質問がありました。私はそんな話は聞いたことがなかったので、整形外科では聞かない話ですが血管外科ではよくある話なのですか、と聞き返しました。すると、しょっちゅうではないけれど時々膝の痛みとか腰痛が良くなる患者さんがいるという答えでした。静脈瘤を治療すると膝の痛みが良くなるなんて話は聞いたことがなかったので、論文などを検索する専用サイトを調べてみると、日本語論文でも、英語論文でもほとんどそのような内容の論文は発見できませんでした。そこで、その患者さんの話を詳細に聞いてみることにしたのです。

Q:その先生の質問がきっかけで調査を始めたということですか?

始まりはそうですが、本格的に調査するにはいろいろな準備が必要ですし、調査することに意義があるのかを考える必要があります。多くの患者さんや医療スタッフが参加することになるため、しっかりとした事前調査が必要です。その事前調査を始めたということです。

Q:その患者さんのお話はどのような内容だったのですか?

膝の痛みが強くて手術目的に紹介された患者さんに静脈瘤が見つかったので先に静脈瘤を手術をしたら膝の痛みがなくなり、膝の手術が必要無くなったというお話でした。
詳しくお話しすると、当院の別の医師が担当した患者さんで、手術目的に紹介された患者さんでした。総合病院では良くある話で、外来で通院していただきながら手術の計画を立てます。その患者さんも膝の手術の予定をしていたのですが、足の静脈瘤がひどかったため、まずはそちらの治療を優先してもらったのです。ところが、静脈瘤の治療を終えた後、その患者さんは膝の痛みもなくなって、お薬も不要になった、だから膝の手術もなしで良いですと言われ外来通院が終了しました。

Q:静脈瘤の治療をしたら膝の痛みが楽になったのですか??

その通りです。その話を聞いて私は、そんなことがあるのかと思いました。20年近く整形外科をしていて初めて聞いた話でした。上司や周りの整形外科医に聞いても、そんなことないだろうという反応でした。それを聞いて【静脈瘤と膝の痛み】の研究を始めました。静脈瘤の治療をして、膝痛のための薬や手術が不要になるほど膝の痛みが楽になるのならよいことであり、また、それを認識している整形外科医がいない状況であると、これは研究や調査をする意義があると思ったわけです。

Q:研究の結果はどのようなものでしたか??

アメリカやヨーロッパでも学会で発表してきてみなさんに興味を持ってもらえました。また、5月に日本整形外科学会で発表した時の内容が、日経メディカル(医師・医療従事者向けに、医療ニュース、臨床知識を伝えるメディア)に掲載されることになりました。やはり静脈瘤の治療のための弾性ストッキングで膝の痛みが良くなるということが皆さんに興味を持ってもらえる内容であると言うことだと思います。もちろん、これが最初の研究であるため、今後様々な議論がなされて内容が変わってきたり、別の事実が出てくる可能性はあります。しかし、私の研究をきっかけに皆さんに静脈瘤と膝痛の議論が広がってくれること自体が、最終的には膝の痛い患者さんのためになるので、大変意義のあることだと思います。

延べ130人以上の膝の痛い患者さんに調査の協力をしてもらいました。詳細は専門的になるので割愛しますが、主なテーマとして静脈瘤があるかどうか、静脈瘤の治療で膝の痛みが楽になるのかを調べました。
すると東濃厚生病院周辺の膝の痛みのある患者さんでは静脈瘤の有病率(静脈瘤がある率)が約60%という結果でした。そして静脈瘤の治療で膝の痛みが楽になる率は約60%で、その半分ほどの患者さんでは足の動きが良くなったりお薬の使用が減ったという効果も確認できました。みんなではありませんがある一定数は静脈瘤の治療で膝の痛みが楽になることがわかりました。

Q:静脈瘤の治療はどのようなものなのですか??

手術療法や弾性ストッキングの使用などがありますが、この研究では弾性ストッキングを使用しています。

Q:ストッキングで膝の痛みが楽になるのなら患者さんにとっても朗報ですね。

おそらく朗報なのですが、まだ、そこまでの結論には至っていません。というのは新しい治療法(膝の痛みに使用するという意味で)というのはその治療の将来的な影響やマイナスの面も考慮しなければなりません。例えば痛みが楽になるという効果がどれほど続くのか、いずれは膝の手術などが必要となるのか、仮に膝の手術がいずれ必要となるならばストッキングの意味はあるのか、など検討すべき課題がまだまだあります。

Q:まだ、発展途上の発見であるということですね??

その通りです。現在1年以上は経過を見ていますが、膝の変形の強い患者さんにいつまで効果があるのかはなんともいえません。ただ、デメリットが特になければ試してみる価値のある治療法かと思います。一方で、膝の変形の軽い患者さんなどでは弾性ストッキングの効果は長期的に期待できるのではないかと予想しています。また、弾性ストッキングの治療法は他の治療法に比べて安価(4,000円前後)であり、患者さんにとっては選択しやすい治療法の一つとなってくれると思います。

Q:それも患者さんが教えてくれたことということですね??

はい、私が【静脈瘤と膝の痛み】という課題を見出せたのはそのような患者さんがとの出会い、そして研究に協力してくれた患者さんたちのおかげといえます。もちろん、最初の質問を投げかけてくれたドクターの存在があればこそで、静岡の病院からの縁のおかげとも言えます。今回は長いお話になってしまいすいませんでしたm(_ _)m

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