
肩の痛み
肩の痛み
中年以降、とくに50歳を過ぎたころに症状が出現しやすいため五十肩とも呼ばれていますが、実際は60歳でも70歳でも似たような症状はあります。加齢や過労により、肩関節を包む袋(肩関節包)の中で炎症が起こることによって、痛みが生じると考えられています。自然に治癒することもありますが、ときに夜間痛で眠れなくなったり、腕を高く上げることや回すことが困難になったりして日常生活に支障がでてきます。関節が癒着して動かなくなることもあります。急性期は安静と、消炎鎮痛剤の内服や痛み止めの注射で痛みを緩和します。急性期を過ぎてからはホットパックなどの物理療法、また、拘縮(こうしゅく)予防や筋肉を強化するための運動器リハを行います。
痛みが強い時や関節が硬くなってしまった時は、運動器リハの効果が十分に発揮されないことがあります。当院ではブロック注射を用いて運動器リハを行うことで、運動器リハの効果が高まることや夜間痛が楽になることが期待されます。
野球肩とは、主に野球の投球動作を繰り返すことによって生じる肩関節障害で、野球以外でもテニスのサーブやバレーボールのアタックなど、腕を大きく強く振る動作を繰り返すスポーツで生じることもあります。肩関節を構成している骨や軟骨、筋肉や腱の損傷が原因で起こります。ジュニア期には特有の病態として上腕骨近位骨端線離開(じょうわんこつきんいこったんせんりかい:リトルリーグショルダー)があります。子どもの骨には骨端線という成長軟骨があり、この部分は力学的に強度が弱く、過度に負荷がかかることで損傷します。診断にはレントゲン検査が必要となります。野球肩の痛みは投げる時に起こり、安静にしていれば痛みません。治療の基本は運動器リハを中心とした保存療法で、投球フォームの見直しや体幹トレーニングなど肩以外の状態も整えるコンディショニングを行います。
肩腱板とは、肩を動かすための筋肉の総称で、棘上筋(きょくじょうきん)、棘下筋(きょくかきん)、小円筋(しょうえんきん)、肩甲下筋(けんこうかきん)という4つの筋肉の集まりをいいます。肩はこれらが協調して動きますが、怪我や使いすぎなどで切れてしまった状態が肩腱板断裂(腱板損傷)です。転んで手をついたり、肩をぶつけたりして起きた怪我による断裂は、非常に強い痛みが生じるとともに肩が上がりにくくなります。スポーツや使いすぎなどによって自然に起こる断裂は、初期は肩を動かしたときに痛みを感じます。断裂した腱板が擦れることで痛みが生じるため、肩を上げる角度や手の位置によって痛みが出たり出なかったり、といった特徴があります。断裂部分が小さい場合は癒着などで症状が軽減することがありますが、大きい場合は修復しにくい状態となり、手術が必要となることがあります。また、手術が必要となった場合、損傷が大きいほど手術が大変となったり、術後の再断裂のリスクが高まります。炎症が続くと肩を動かさなくても常に痛むようになります。五十肩と症状が似ていたり、腱板断裂が五十肩のきっかけとなることがありますので、早めの受診をお勧めします。
肩腱板は、レントゲンには写らないため、疑う場合は超音波エコー検査でその場で診断して、確認のためにMRI検査を追加して診断します。超音波エコーではMRIでもわからないような小さい断裂を確認できる場合があります。治療は運動器リハを中心とした保存的治療をまず行い、改善が見られない場合に手術を検討します。強い痛みに対しては腱板断裂部にエコーを用いてブロック注射を行うことがあります。これにより、痛みが緩和された状態での運動器リハを行ったり、夜間痛などを軽減することが期待されます。
当院の院長は2か所の総合病院でスポーツ整形の手術環境・リハビリ環境を整えた経験があり、また、当院にはスポーツ整形で有名な病院で運動器リハを担当していたPT(理学療法士)が在籍しております。当院では、これらの経験を元に患者さんごとに最適なプログラムを作成して手術後の運動器リハを提供いたします。
肩関節脱臼は、いわゆる「肩が外れた状態」のことをいいます。外部から強い力を受けることで上腕骨頭(じょうわんこっとう:半球状の関節面)が関節の外に押し出されることで起こります。外傷による肩関節の脱臼は、ラグビー、アメフト、柔道などのコンタクトスポーツ(人とぶつかるスポーツのこと)で起こりやすく、日常生活でも転倒時に手をついたときなどに起こることもあります。一度脱臼すると癖になりやすく、スポーツ活動ばかりでなく、寝返りのような日常動作でも脱臼が起こりやすくなります。これを「反復性肩関節脱臼」といいます。そのため、脱臼後は3週間ほどは肩を動かさないように固定します。それでも反復性型関節脱臼となってしまうことがあります。
脱臼した直後は肩関節に強い痛みが生じ、関節の動きが制限され、全く動かせなくなることもあります。神経を損傷していると、しびれを伴うこともあります。脱臼を整復し損傷部位が修復されれば普通に動かせるようになりますが、その後も日常生活やスポーツ活動において脱臼を繰り返し、そのために活動が制限されるようであれば、手術が必要になることもあります。
当院の院長は2か所の総合病院でスポーツ整形の手術環境・リハビリ環境を整えた経験があり、また、当院にはスポーツ整形で有名な病院で運動器リハを担当していたPT(理学療法士)が在籍しております。当院では、これらの経験を元に患者さんごとに最適なプログラムを作成して手術後の運動器リハを提供いたします。
肩こりは、首のつけ根から肩や背中にかけて、張り・コリ・痛みといった症状があり、頭痛や吐き気を伴うこともあります。原因には「連続して長時間同じ姿勢をとる」、「首・背中が緊張するような姿勢での作業」、「前かがみ・猫背など姿勢が悪い」、「運動不足」、「精神的なストレス」などが挙げられます。
肩こりは予防が大切です。同じ姿勢を長時間続けない、肩を温めて(蒸しタオルなど)筋肉の血行を良くする、適度な運動や体操をする、入浴で身体を温めてリラックスする、といったことを心がけて、しっかり予防しましょう。ただし、高血圧症、眼疾患、頚椎疾患、耳鼻咽喉疾患、肩関節疾患の随伴症状として起こる肩こりもありますので、肩こりでお悩みや不安があれば気軽にご相談ください。
症状が強い時には肩の周囲にある神経をブロックしたり、こりをほぐすような注射をすることもあります。これらの注射と運動器リハを併用することで症状の改善を目指していきます。
肘関節を形成している骨(上腕骨、尺骨、橈骨)の先端は、関節軟骨に覆われており、骨にかかる衝撃を緩和しています。変形性肘関節症は、この関節軟骨がすり減り、壊れることで肘関節が変形していく疾患です。初期は運動や作業など、肘に負荷がかかったときにだけ痛みを感じますが、進行すると着替えや食事などの動作でも痛みを感じるようになります。変形が高度になると、安静時にも痛むようになります。骨と骨がぶつかり合うことで骨のトゲ(骨棘:こつきょく)ができ、肘の屈伸の動きが制限され日常生活動作に支障がでたり、動かそうとすると激痛が走ったりすることもあります。また、肘内側を走行する尺骨神経が圧迫され、小指や環指(薬指)にしびれを感じたり、握力が低下したりする肘部管症候群(ちゅうぶかんしょうこうぐん)を起こすこともあります。
肉体労働での肘関節の使いすぎによる発症や、野球やテニスなどで肘関節を痛め、のちに50~60歳代になって発症するケースもあります。骨折の治療後に変形することもあります。
急性期の治療は、肘をできるだけ動かさずに安静を保ちます。消炎鎮痛剤の投与や患部を温める物理療法、関節注射などの保存的治療が基本となります。保存的治療を行うなかで、痛みの持続や骨の変形が認められ、日常生活に支障を来す場合は、稀ですが手術治療が検討されます。
上腕骨外側上顆炎は、「テニス肘」や「ゴルフ肘」とも呼ばれています。肘から前腕には、手首を動かしたり、指を曲げたりする筋肉が重なるように存在し、その中の一つに橈側手根伸筋(とうそくしゅこんしんきん)という筋肉があります。テニスなどで同じ動作(主にバックハンドストローク)を何度も繰り返し、過度な負担がかかることにより、この筋肉に亀裂や炎症が生じて痛みが起こると考えられています。また、日常生活の中で毎日包丁を握る、フライパンを使用する、ゴルフでクラブを握るといった握る動作の繰り返しや、スマホやパソコンの操作のしすぎで発症することもあります。スマホやパソコンを使用する時には良い姿勢を心がけましょう。
安静時には痛みは少なく、「タオルを絞る」、「ドアノブを回す」といった手首を曲げたりひねったりする動作で、肘や前腕に痛みを感じます。治療では、肘だけでなく手指や手関節部も安静にします。消炎鎮痛剤の投与と装具療法(テニス肘用バンドなど)を併用する保存的療法が基本です。また、当院で行っているエコーを用いた注射により疼痛の改善やリハビリ効果を高めることが期待されます。保存的療法により改善が見られない場合は、手術治療が検討されます。
野球肘とは、投球動作の繰り返しによって起こる肘の障害で、肘関節を保護している軟骨や靭帯、筋肉、腱などが損傷する病態の総称です。医学的名称は上腕骨内側上顆炎(じょうわんこつないそくじょうかえん)といいます。肘への負荷が過剰になることが原因で、痛みの部位によって内側型、外側型、後方型に分類されます。
内側型は、肘の内側に過剰な負荷がかかり、靭帯の牽引力によって腱や軟骨が損傷します。代表的な病態には内側側副靱帯損傷(ないそくそくふくじんたいそんしょう)、内側上顆裂離骨折(ないそくじょうかれつりこっせつ)があります。
外側型は、肘の外側にある骨や軟骨が剥がれたり傷んだりすることで炎症や骨折が生じます。代表的な病態には離断性骨軟骨炎(りだんせいこつなんこつえん)があります。
後方型は、上腕骨後方にある凹んだ部分(肘頭窩:ちゅうとうか)にストレスがかかることで、疲労骨折や骨棘(こつきょく)形成が起こります。代表的な病態には肘頭部疲労骨折(ちゅうとうぶひろうこっせつ)があります。
治療では、投球を一時休止して安静に努めます。痛みが治まってきたら医師の指示のもと、競技への復帰と再発予防の観点から運動器リハを行います。骨折がある場合は手術となることがあります。
スポーツを活発にされているお子さんは、当院で行っている野球肘検診やメディカルチェックなどで定期的に肘の状況を確認しましょう。
腱鞘炎(けんしょうえん)は、手の使いすぎによって指や手首の関節などに痛みが生じる疾患です。手首の母指(親指)側にある腱鞘(けんしょう)と、その部分を通過する腱の間で摩擦が起こり、手首の母指側が痛んだり、腫れたりします。安静にして手を使わなければ腫れは引きますが、現実問題として手を使用しないで生活することは困難です。治療をせずに使い続けると腫れや痛みが強くなります。スポーツや仕事で指を多く使う方によくみられます。手を使用しないことは不可能なので、手を使用しながら治療を行うこととなり、治癒までには一般的に時間がかかります。手をできるだけ安静にする、お薬や湿布、運動器リハを併用するなどして治療します。当院ではエコーを用いた診断により、最適な治療対応をすることができます。また、症状が強い場合にはエコーを用いた注射を行うことで早期に症状の緩和に努めます。
腱鞘炎によって腱鞘が狭くなったり、腱が腫れたりすると、曲げた指を伸ばそうとした時にカクンとばねのように跳ねることがあります。この症状を「ばね指」と呼びます。母指、中指、環指(薬指)によくみられます。腱鞘炎(ばね指)の治療は、局所の安静、投薬、腱鞘内ステロイド注射などの保存的療法が行われます。
手根管症候群とは、手のひらの手首よりにある「手根管」という狭いトンネル内で正中神経が圧迫されることにより、手のしびれや痛みを引き起こす疾患です。特に、親指、人差し指、中指、薬指の一部に症状が現れ、放置すると手の筋力低下につながることがあります。
手根管症候群の主な症状として下記のような症状が主に見られます。
エコーを用いて狭い部位や炎症を確認したり、身体所見から診断をします。症状の進行度によって治療が異なりますが、手首の安静・固定、薬物療法、運動器リハによる負担軽減が行われますが、重度の場合にはエコーを用いたい注射を行います。注射を行っても改善しない場合は手術による神経圧迫の解除が必要となる場合がありますので、手のしびれや痛みが続く場合には早めに受診しましょう。
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